特集 自動車素材−材料の進化と課題
自動車素材の変遷
高 行男[中日本自動車短期大学教授 工学博士]はじめに
自動車に求められているキーワードは、安全、環境、燃費、リサイクルである。これらは材料と密接に関連している。排出ガス問題として話題になったディーゼルエンジンの黒煙などを捕集するDPFひとつとっても、炭化ケイ素というセラミックスが重要な役割を果たし、自動車技術の革新には材料が必要になる。材料があったので使用する一方、使用目的のために材料は新たに開発される。
既存の材料のリサイクル性は議論されるが、新たに開発される材料にもその視点が必要になるところに問題の複雑さがある。プラスチックのリサイクル問題が議論されているが、複合材料であるFRP(繊維強化プラスチック)の誕生にあたり、リサイクル性のみが問われたとすれば、今日の航空機の主要材料(CFRP)として登場で� �たかは疑問である。材料は人間とよく似ており、ひとつの基準だけで判断できないもの、つまり良いところもあれば悪いところもあると考えて材料を見つめる必要があると思っている。
自動車の製造というモノづくりの基礎は、材料とその加工である。材料があり、それを加工して初めて製品ができあがる。材料として良い性質があっても、加工がむずかしいと加工コストが高くなり、特に量産車には使用されることにならない。つまりコストという視点が加味される。国内外での自動車販売の熾烈化において、コストは材料の採用基準の大きなひとつであるが、自動車に使用される材料は、時代の要請・課題により中身を変えてきた。自動車には、金属、プラスチック(樹脂)、ゴム、セラミックスなど、さまざまな材料が使われ� ��いるが、本稿では、自動車の軽量化という視点から、鉄、アルミ、樹脂を概観してみたいと思う。
1.自動車を構成する三大材料 − 鉄、アルミ、樹脂
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